導かれた場所:JUKE JOINT矢羽田賢明

  

松本さんと私が出会ったのは亡くなる10年ちょい前。まあ正確には数十年前にレコード屋のお客として接触はしているのだけど、会話をして認識されたのはその時だと思う。往年の先輩方に比べたら私が交流できた時間なんてたかが知れてる、ビートルズをアビーロードだけで語るようなもんだろうから、これを読む諸先輩の方々には広い心でこの後の文章を理解していただければと思います。

2014年、私が好きだったバンドの再結成ドキュメント映画をKBCシネマで再上映して頂ける事になり、そのオフ会をジュークジョイントで行う事になったのがきっかけで、私は松本さんと交流することになった。
それから暫くして、そのオフ会に来てくれた人達の要望もあり、私は今一緒にジョイントを運営している原と共に「MATSUZIME」と云う月一の定期イヴェントをジュークジョイントで開催することになり、松本さんともより親交を深め、同時にジュークに集まる人達とも交流を深めていくことになる。
当時ジョイントを任せていた溝口さんがやめて松本さんはレコ屋を閉めた後にジョイントの店番というダブルワーク状態で中々大変の状況だったので、我々も後片付けなど手伝ったりしていた。
それから数年が経ち松本さんが体調を崩し入院すると、その間ジュークジョイントを維持すべく当時定期イヴェントを行っていたメンバーと常連で店番を回しながら運営する事になり、その後松本さんが退院した後も体調は万全ではなかったので、そのままその形が続く事になる。

退院後、まだ割と松本さんが元気だった頃は、レコード屋の帰りにジョイントにも顔を出したり、鮎川さんとのロック塾や英語塾を行ったりしていて、何より楽しかったのは年末に定期イヴェントのメンバーが全員集合して開催していた忘年会的イベント「BEST MUSIC JUKE」は毎年本当に楽しかった。司会業がプロの椎葉さんやLOVE FMの松井さん達も来られてるのに、素人の私がトークの司会をやった時は、まあ冷や汗もんで皆に突っ込まれ散々だったのも良き思い出である。
松本さんを中心として、音楽という共通理念をもとに色んな世代やジャンルの人達が一様に集まり、忖度もなく笑い語らい歌い踊ったあの時間は、いま思い出しても涙が出るほど良き時間だったと思う。
あの空間が松本さんがジョイントでやりたかった一つの形だったのかはわからないけど、きっと理想としていた一つではなかったのかなとあの時の楽しそうな表情を思い出せばそう思ってしまう

そんな楽しかった時間も過ぎ、松本さんが入退院を繰り返し次第に体調が悪化していく中、亡くなる1年ちょい前、最後の入院となる時、我々にジュークジョイントを閉めると松本さんから話があった。
私はそれからここ数年の帳簿をひっくり返してデータ化し、ジョイントの経営状況を算出することにしたのだけど、年間の赤字は約20万程度。つまり月1.8万程度の赤字で、その程度であれば我々が補填するのであればまあ維持できるのではないかと思い、原と相談してジョイントを引き継ぐ事を決意し、その旨を松本さんに告げると松本さんは「ありがとう」と言ってくださった。
私はその言葉を聞いて、嬉しかったし何よりとても安心した、何故なら松本さんは、本当はジョイントを続けたかったのだと思ったからだ、引き継ぐ事で一番大事だったのはジョイントを作った松本さんがジョイントが残したいと思う場所なのかと云う事で、それがなければ引き継ぐ意味はないと思っていたから、ありがとうと言ってくれた事は私に取って本当にありがたかったし、今もそれは一つの支えになっていると思う。

松本さんが亡くなって早いもので3年が経つ。
それから変わらずジョイントは何とか続いている
松本さんが決めたルールは、なるべくそのまま現状維持で。

名義上オーナーは我々になってしまったけれども
JUKE JOINTは、今も松本さんがオーナーであり、ここに来る皆さんそれぞれのものであると私は思っていて、
私たちは、ただその場所の当番として日々店を開け閉めしてるだけなのだ

私は、常連の皆さん程博多の音楽の歴史を知らないし、松本さんが愛したブルースにも詳しくはなく、我々がこの場所を引き継ぐにはあまりにも無知で無礼なのかも知れない。それは松本さんが亡くなった後、沢山の事が動き出してからより強く感じ背負った責任の大きさに焦りの様な申し訳なさを感じたりもする。

でも、その反面、私が若い頃久留米のビックビートに通っていたのも、14年前に沢山の箱から映画のオフ会の会場にジュークジョイントを選んだのも、この店を手伝ったことも、松本さんはじめ沢山の音楽を愛する人達に出会えたのも、そしてこの場所を引き継ぐことになったのも、すべて繋がって導かれており、きっと偶然ではなく必然だったのかも知れないとも感じている。

沢山の奇跡の様な出会いがあって、私たちは今ジョイントを運営している。
ここに来るまで私はフィールドの外の観客の様な存在だった、それが今はフィールドに立ち沢山の音楽を愛する人達の中に自分がいる事の幸せを噛み締めている

それはきっと松本さんが作ってくれた場所のおかげだ

私は、ジョイントを続ける事の責任と云う程のものは持ち合わせていないが、
誰かがジョイントに訪れる限り、ジョイント続けていければと思っている

そしていつか共感した次の世代がジョイントを引き継いで行ってくれたらそれが理想だ

ジョイントを引き継いでこれまで沢山の人の松本さんへの愛によって支えられきました。
本当に皆さんありがとうございます。
これからもJUKE JOINTとJUKE RECORD REVISITEDをよろしくお願いします。

JUKE JOINT 矢羽田賢明