<Keep On Jukin'> アトランティックR&Bの1000円シリーズ

以下のテキストは2013年4月3日、2013年4月5日、2013年4月6日、2013年4月15日、ウェブコラム「Keep On Jukin'」にて松本康が執筆したテキストです。

2013.4.3 「アトランティックR&Bの1000円シリーズ」#1
 個人的にも、ジューク・レコードとしても、今一番盛り上がっているのが、アトランティックR&Bの1000円シリーズだ。
 2012年の10月と11月に50枚ずつ、計100枚。その安さもだが、内容が本当に凄い。1枚の駄作もないと言っていい。

Doris Troy / Just One Look (1963)
Nikki Giovanni / The Way I Feel (1975)

 自慢するようだが、アトランティックにゾッコンだった私は、この100枚のうち、都合でいくつかは手放したが、98枚、LPで持っていた。(ちなみに持っていなかったのはニッキ・ジョヴァンニ <NIKKI GIOVANNI>とドリス・トロイ <DORIS TROY>)それぐらいに魅力的なラインナップなのだ。
 どれも、とにかく歌がいい。曲もだが、その歌いっぷり。どれもが、自分の歌の世界を持っている。少し聞き込めば、その声が聞き分けられる。それだけ、各々が個性に溢れている。そして、シンプルだが味のある演奏陣がそれを支える。中には、ブッカーT&ザMGズ <BOOKER T. & THE MG’S>、マーケイズ <MAR-KEYS>、バーケイズ <BAR-KAYS>といったインストゥルメンタル・グループもあるが、それらにしても「歌っている」
 たぶん、反響の大きさに気を良くしたのだろう、ワーナー・ミュージックが何と、次の100枚をこの2013年の3月と4月にリリースする。こちらはアリーサ・フランクリン <ARETHA FRANKLIN>などの看板シンガーもあるが、サム・ディーズ <SAM DEES>、ディー・ディー・ワーウィック <DEE DEE WARWICK>、アイヴォリー・ジョー・ハンター <IVORY JOE HUNTER>などの目玉があったり、1970年代のファンク・グループの珍しいアイテムが続く。本当にアトランティックは、飽きない、尽きない。あと100枚出してもいい、私が選びたいぐらいだ。

2013.4.5 「サタデイ・ナイト・アット・ジ・アップタウン」
 アトランティックR&Bの1000円シリーズの最初の100枚で、自分でもすぐ買おうと思ったのがその持ってなかった2枚だが、それよりも、最も先に手にしたのが、オムニバスの『サタデイ・ナイト・アット・ジ・アップタウン “SATURDAY NIGHT AT THE UPTOWN”』だ。ジャケットのデザイン・コンセプトも同じの、兄貴分的な『アポロ・サタデイ・ナイト ‘APOLLO SATURDAY NIGHT”』の続編的な内容だが、桃色がかったジャケットの色と雰囲気の良さも相まって、最初見たときはすぐに目を奪われた。

Various Artists / Apollo Saturday Night (1964)

 それは、実に約35年前、ベスト電器の合同セールに出店していた東京のマンハッタン・レコードのブースでの事だった。価格は忘れもしない8800円。1978年頃だから、時給がまだ500円ぐらいだったと思うが、とにかく手が出ない値段だった。そのセール期間中、何度も「買おうか、買うまいか」と自問自答したが、結局あきらめた。当時、私は1枚のレコードに 3000円以上はかけないという確固たるポリシーを持っていた(結構グラグラしていたのだが)。
 それから、ずっと忘れかけていたのだが、1990年代にアメリカに買い付けに行くようになって、やっと見つけた。見初めてから20年以上も経っての再会だった。今度は手頃な価格、やっと我が家にやって来た。その散々苦労したアイテムが何と1000円。どこでも聴きやすくするため、このCDも買った。サイズは当然小さいが、このジャケットを手にすると、にやけてしまう。ウィルソン・ピケット <WILSON PICKETT>とドリフターズ <DRIFTERS>が、世間的には有名だが、やや無名な他のグループも嬉しい。

Various Artists / Saturday Night At The Uptown (1964)

 内容は、1964年にフィラデルフィアのアップタウン劇場(ああ、どちらも何といい響きなんだ!)で行われたアトランティック社所属アーティストの実況録音盤なのだが、ヴァイブレイションズ <VIBRATIONS>やカールトンズ <CARLTONS>はライヴァルと言っていいチェス系のはずだが、客としてはそんな事どうでもよくて、当時、旬だった連中だったという事だろう。
 MCに導かれて、最初に出てくるドリフターズの「渚のボードウォーク」(Under The Boardwalk)から、臨場感は一気に高まる。黄色い声の女子が、曲にあわせて歌いだす。最初からだが、決めの文句「Under The Boardwalk、Boardwalk」のあたりは最高。手拍子も歌もゆるいんだが、実に楽しげ。最近の日本のライヴみたいに、ガチガチの「一体感」がない。皆好き気ままにやっている感じ。マッコイズで有名になった「ハング・オン・スルーピー」の原曲、ヴァイブレイションズの「My Girl Sloopy」にしても会場のざわめきがいい。
 ウィルソン・ピケットの「If You Need Me」は、まるで教会での説教師と信者のように、ピケットが切々と語りかけ、歌う。このアルバムではトリになっているバーバラ・リンは左利きのギターを自分でも弾くブルース・フィーリングも持ち合わせたダウンホームなソウル・レイディ。曲はローリング・ストーンズが『NOW』で取り上げた「(O Baby) We Got A Good Thing Goin’」。姉御肌の立ち居振る舞いが、目に浮かぶ。
 このアルバムは、他にも、私にとって、楽しみは満載なのだが、万人にお薦めと言う訳にはいかない。録音も、歌も、演奏も、粗い。でも、こういうアルバムが売れたりすると、今回のシリーズも、もっと意義が高まる

2013.4.6 「アトランティックR&Bの1000円シリーズ」ディスク・ガイド
 アトランティックR&Bシリーズ。せっかくだから、私の主観で優先順位をつけてみよう。
 まずは、第1期の100アイテムを対象にグループ分けしてみる。とりあえずアーティストとタイトルだけ並べて、コメントはリクエストがあったら、私なりに書いてみたい。便宜的に番号を振っているが、順不同。

まずは、

絶対の10枚 (Absolute 10) 

1)オーティス・レディング『ソウル・バラードを歌う』

2)ウィルソン・ピケット『イン・ザ・ミッドナイト・アワー』

3)ブッカーT. & MG’s『グリーン・オニオン』

4)サム&デイヴ『ダブル・ダイナマイト』

5)ソロモン・バーク『イフ・ユー・ニード・ミー』

6)クローヴァーズ『クローヴァーズ』

7)ラヴァーン・ベイカー『ロック・アンド・ロール』

8)ルース・ブラウン『ロック・アンド・ロール』

9)クライド・マクファター&ドリフターズ『ロック・アンド・ロール』

10)V.A.『スタックス/ヴォルト・レヴューVol.1~ライヴ・イン・ロンドン』

Otis Redding / Sings Soul Ballads (1965)

次は、

愛すべき10枚 (Beloved 10)

1)ドン・コヴェイ『シー・ソー』

2)ベン・E.キング『ドント・プレイ・ザット・ソング』

3)スィート・インスピレイションズ『スィート・インスピレイションズ』

4)チャック・ウィリス『キング・オブ・ザ・ストロール』

5)アルバート・キング『キング・オブ・ザ・ブルース・ギター』

6)ウィリアム・ベル『ザ・ソウル・オブ・ベル』

7)クラレンス・カーター『ジス・イズ・クラレンス・カーター』

8)ジョー・ターナー『ロック・アンド・ロール』

9)カーラ・トーマス『カーラ』

10)V.A.『アポロ・サタデイ・ナイト~ライヴ・アット・アポロ・シアター』

Don Covay / See-Saw (1966)

さらに、

そそる10枚 (Curious 10)

1)ベティ・ライト『アイ・ラヴ・ザ・ウェイ・ユー・ラヴ』

2)バーケイズ『ソウル・フィンガー』

3)バーバラ・リン『ヒア・イズ・バーバラ・リン』

4)キャピトルズ『ダンス・ザ・クール・ジャーク』

5)アーサー・コンレイ『スィート・ソウル・ミュージック』

6)ジョニー・テイラー『ウォンテッド・ワン・ソウル・シンガー』

7)クリス・ケナー『ダンス天国』

8)ダイナミックス『ファースト・ランディング』

9)ダレル・バンクス『ダレル・バンクス・イズ・ヒア』

10)V.A.『サタデイ・ナイト・アット・ジ・アップタウン』

Betty Wright / I Love The Way You Love (1972)

どうにか、

この辺りまでの10枚 (Definite 10)

1)アーチー・ベル&ザ・ドレルズ『ゼアズ・ゴナ・ビー・ア・ショウダウン』

2)ドリス・トロイ『ジャスト・ワン・ルック』

3)バーバラ・リン『ヒア・イズ・バーバラ・リン』

4)バディ・ガイ&ジュニア・ウェルズ『プレイ・ザ・ブルース』

5)パースエイダーズ『シン・ライン・ビトィーン・ラヴ・アンド・ヘイト』

6)ビギニング・オブ・ジ・エンド『ファンキー・ナッソウ』

7)ブルー・マジック『ブルー・マジック』

8)バーバラ・ルイス『ワーキン・オン・ア・グルーヴィー・シング』

9)マーキーズ『ドゥー・ザ・ポパイ』

10)ミッキー・ベイカー『ザ・ワイルデスト・ギター』

Archie Bell & The Drells / There’s Gonna Be A Showdown (1969)

2013.4.15 「第2期アトランティックR&B100のガイダンス」
 狂喜乱舞の1000円CDシリーズ、アトランティックR&B100(2013年3月、4月発売)の第2期分のガイダンスを作ってみた。前回同様、コメントのリクエストがあれば、なるべく答えるようにしたいが、自分のひらめきも大事にして欲しいです。
 第1期の100枚を各々10枚ずつ、A群~D群に分けたが、今回は続きをE群~H群に分けてみた。そして、ずっと飛んでU群をいうのがある。それは?

まずは、

申し分のない10枚 (Excellent 10)

1)アレサ・フランクリン『アレサ・ナウ』

2)アレサ・フランクリン『アレサ・ライヴ・アット・フィルモア・ウェスト』

3)サム&デイヴ『ホールド・オン』

4)ウィルソン・ピケット『エキサイティング・ウィルソン・ピケット』

5)コースターズ『コースターズ』

6)オーティス・レディング『オーティス・ブルー』

7)レイ・チャールズ『ホワッド・アイ・セイ』

8)キング・カーティス『ライヴ・アット・フィルモア・ウェスト』

9)ダニー・ハザウェイ『愛と自由を求めて』

10)パーシー・スレッジ『男が女を愛するとき』

Aretha Franklin / Aretha Now (1968)

次に、

際立つ10枚 (Fabulous 10)

1)アーチー・ベル&ザ・ドレルズ『タイトゥン・アップ』

2)スピナーズ『フィラデルフィアから愛をこめて』

3)サム・デーズ『ザ・ショウ・マスト・ゴー・オン』

4)ドリフターズ『アップ・オン・ザ・ルーフ』

5)レイ・チャールズ『ハレルヤ・アイ・ラヴ・ハー・ソー』

6)ソロモン・バーク『グレイテスト・ヒッツ』

7)クローヴァーズ『ダンス・パーティー』

8)ロバータ・フラック『やさしく歌って』

9)ダニー・ハザウェイ『ライヴ』

10)アイヴォリー・ジョー・ハンター『アイヴォリー・ジョー・ハンター』

Archie Bell & The Drells / Tighten Up (1968)

さらに、

癖になる10枚 (Gritty 10)

1)チャンピオン・ジャック・デュプリー『ブルース・フロム・ザ・ガター』

2)ディー・ディー・ワーウィック『ターニング・アラウンド』

3)ブラック・ヒート『ブラック・ヒート』

4)ギター・スリム『アトコ・セッションズ』

5)ジャッキー・ムーア『スィート・チャーリー・ベイブ』

6)ジョン・エドワーズ『ライフ、ラヴ・アンド・リヴィング』

7)ドン・コヴェイ&ザ・ジェファソン・レモン・ブルース・バンド『ザ・ハウス・オブ・ブルー・ライツ』

8)トゥルー・リフレクション『ホエア・アイム・カミング・フロム』

9)キング・フロイド『キング・フロイド』

10)ビリー・ヴェラ&ジュディ・クレイ『ストーリーブック・チルドレン』

Champion Jack Dupree / Blues From The Gutter (1959)

そして、

地味だけどの10枚 (Humble 10)

1)オスカー・ブラウン JR.『ムーヴィン・オン』

2)R. B. グリーヴス『R. B. グリーヴス』

3)バーバラ・ルイス『ベイビー、アイム・ユアーズ』

4)インプレッションズ『イッツ・アバウト・タイム』

5)C. L. ブラスト『アイ・ウォナ・ゲット・ダウン』

6)グウェン・マックレイ『グウェン・マックレイ』

7)インパクト『インパクト』

8)メイジャー・ハリス『ジェラシー』

9)マージー・ジョセフ『マージー』

10)ジミー&ママ・ヤンシー『シカゴ・ピアノ VOL.1』

Oscar Brown, Jr. / Movin’ On (1972)

何を隠そう、

未知なる10枚 (Unknown 10)

1)フェイズ・オー『ライディング・ハイ』

2)ユージン・マクダニエルズ『アウトロー』

3)ファンク・ファクトリー『ファンク・ファクトリー』

4)ジミー・キャスター・バンチ『スーパーサウンド』

5)メルヴィン・ヴァン・ピーブルズ『ホワット・ザ,,, ユー・ミーン・アイ・キャント・シング?』

6)フリーク『パトリック・アダムス・プレゼンツ・フリーク』

7)ロン・マトリック『ラヴ・シティ』

8)ソウル・サヴァイヴァーズ『テイク・アナザー・ルック』

9)ラスプーチンズ・スタッシュ『ラスプーチンズ・スタッシュ』

10)ウィルバー・ド・ハリス&ジミー・ウィザースプーン『ニューオーリンズ・ブルース』

Faze-o / Riding High (1977)

 このU群の10枚は実のところ、私は聞いた事がない。LP時代に、私自身も全くお目にかかった事がない代物が多い。
アトランティック通を自負していた私だが、盲点だった。自分への今後の課題といったところ。

<参考サイト>
ATLANTIC R&B BEST COLLECTION 1000「第1弾 2012年10月3日発売」

ATLANTIC R&B BEST COLLECTION 1000「第2弾 2012年11月7日発売」