<Keep On Jukin'> クール・ジャーク (Cool Jerk)

以下のテキストは2013年4月24日、ウェブコラム「Keep On Jukin'」にて松本康が執筆したテキストです。

GROOVY TUNES 100 / 私の好きな曲(These are a few of my favorite songs)

#2「クール・ジャーク (Cool Jerk)」

 いつものように店で、五連奏プレーヤーでCDをかけていたら、この曲の時に私の耳が感知し、意識がそっちに行った。
好きな曲なんだなあ、勝手に反応する。そのCDはLA-DE-DA’Sの『HOW IS THE AIR UP THERE ? 1966-1967』(Ascension ANCD-018)で、彼らは1960年代から1970年代にかけて活躍したニュー・ジーランドの5人編成のバンド。
このベスト的なアルバムはまるで、カヴァーの見本市のようで、

「I Put A Spell On You」
「I Take What I Want」
「Land Of 1000 Dances」
「Shake」
「I’ve Got My Mojo Working」
「Gimme Some Lovin’」
「Stupidity」
などが並ぶ。私のGT100の候補曲のオン・パレードみたいでもある。このアルバム・タイトルになった曲などがオリジナル・ヒットとしてあるらしいが、レパートリーの大半はカヴァーだったようだ。キーボードも入り、演奏力はまずまずだが、驚くほどものは無い。

The La De Das – How Is The Air Up There? 1966-1967

 それがきっかけで、このGROOVY TUNES 100の2曲目に取り上げようと思って、私のライブラリーをチェックすると、えぇ、意外な事に、この曲はあまりカヴァーされてない。このシリーズの選曲のポイントは少なくとも、オリジナルを含めて4つのヴァージョンがあり、それが私のグルーヴィー検知器で「起、承、転、結」の部門で、それぞれの基準を満たさないといけない。「クール・ジャーク」はギリギリだ。かろうじて5ヴァージョン

 オリジナルは、今回のアトランティックR&B1000シリーズでも出たキャピトルズ <CAPITOLS> で、もちろんそれが「起」となる。
「承」はコースターズ <COASTERS>、
「転」はゴーゴーズ <GO-GO’s>
そして「結」がブーチー・コリンズ <BOOTSY COLLINS> となる。

CAPITOLS - Dance The Cool Jerk (1966)

 何と言ってもオリジナルのキャピトルズが飛び抜けすぎている。
ベースとピアノの低音のリフから始まり、ドラムと手拍子とタンバリンが一気にご機嫌なリズムを作り、コーラスがすかさず「クール・ジャーク、クール・ジャーク」と。とぼけた味のリードも快唱、息をもつかさない展開が続く。
特に中盤の語りのかっこよさといったらない。「ドラム来てくれ、ベースも、うーんイカすぜ、こたえられないな」といった具合。ピアノもよく転がり、コーラスもいきいきとリスポンスして、魔法のような3分間が過ぎていく。(実際は2分45秒)

Various Artists - Royal Grooves:Funky and Groovy Soul from the King Records Vaults

 カヴァーが少ない理由は、オリジナルがあまりにグルーヴィー過ぎるから。キャピトルズ自身もほかにいくつか、二匹目のドジョウのダンス・ナンバーを狙うが、これ以上のものには至らなかった。
 「承」のコースターズ(『V.A. / ROYAL GROOVES』収録) は、1950年代に「Poison Ivy」他のヒットを連発したグループで、キャピトルズの先輩格だが、何と後輩の曲を、しかも1972年にカヴァーしている。
サルサの大御所ラリー・ハーロー (LARRY HARLOW)が関わっているのでラテン色が加味されていて、リズムの面白みはあるが、ヴォーカル・ワークは後退している。

The Go-Go's - Vacation (1982)

 「転」のゴーゴーズ (『VACATION』)は「女は愛嬌、度胸も満点」のガールズ・ビート・バンドの出来。途中の語りもベリンダ・ヴァージョンで面白い

Standing in the Shadows of Motown (Original Soundtrack) (2002)

 「結」のブーチー・コリンズ は意外だった。P. FUNKの寵児だった彼とモータウンというのも、こういう曲を歌うとも、全く結びつかなかった。それは1960~70年にヒットを量産したモータウンで、縁の下の力持ちだったセッション・メンバー、ファンク・ブラザーズ(ジェイムズ・ジェマーソン <JAMES JAMERSON> は不滅なり!)を取り上げたドキュメント映画『永遠のモータウン(STANDING IN THE SHADOWS OF MOTOWN)』(2002年)のサントラに入っているライヴ・トラックでのこと。
原曲に沿った歌と演奏だが、例の語りのところは、メンバーのソロを促すところの感じがブーチー流。

 何と恐ろしい事に、この4曲、すべてYouTubeで聞ける。レコード店はお手上げだ。
 せっかく1000円になったので、この曲が入っているキャピトルズの『DANCE THE COOL JERK』を入手して欲しい。B級フレイヴァーもたっぷり味わえる。