レコードハンティングのコツ#3

1990年代の寄稿文より

 「廃盤」「オリジナル」「レア」。これらの言葉に、ディスク・マニアは自制心をなくしてしまう。
今のところ、CDではそういうもの神通力は弱いが、ビニール盤(ヴァイニールと呼びたいのだけど)になると、これはまるで金科玉条のように、その威力を発揮する。

 だが待てよ、「廃盤」と言っても、新譜でビニールが出されることがきわめて稀になった(世界有数の音楽消費国、日本でそれが皆無に等しいというのは全くの理不尽!)現在、廃盤でない方を探す方が難しいので、この言葉はあまり意味をなさない。
 「レア」というのはほとんど、内容が良くなくて売れなかった、従ってあまり市場に出回ってない、というのが実状だから、これを壁に飾る目的ならいいかもしれないが、聴く上では満たされることが少ない。
蓼喰う虫も好き好きというから、それは個人の勝手である。私もその傾向がなきにしもあらずだから、大きいことは言えない。ただ問題なのは、「レア」だと一言コメントが付くだけで、値段が高くなると言うこと。
今まで3枚1000円コーナーにあったようなものが、誰かが騒ぎだすと、急に10倍ぐらいに高騰したりするので、狩場が荒らされるといって、ハンターは嘆くが、ハンターもただ集めるだけで、聞かずコレクターに堕していたりするから、どっちもどっち。「レアだぜ、高いぜ」と言って喜ぶのは、金持ちの道楽と思って、聴くのが主の人は、静観して、そういう人を相手にしないでいると、全体的に価格は下がってくる。バブルはレコードにもあてはまる。

 さて、「オリジナル」というのが、一番厄介なもので、人によって解釈が異なる。
簡単に言うと、あるアーティストのものがその国で新譜として発売されたもの入手する、例えば、SMAPだろうが、小沢健二だろうが、予約して発売当日に買ったりする人は、間違いなくオリジナル盤の所有者になる。
ただ、ストーンズだとどうか。彼らはイギリス人だから、イギリス盤を最初に輸入盤店に入ってきたものを買うといい。でも、今やイギリス盤もEC(ヨーロッパ共同体)製というディスクになっていたりして、国籍が特定しにくい。
人気の高いアメリカの方で先行発売されたりしたら、こちらがオリジナルと言えなくもない。帯付き、解説付きの日本盤の初回プレスがオリジナル盤だと思う人もいる。
これも好き好きだが、私はイギリス人のものは英盤、アメリカ人のものは米盤、ジャメイカ人のものはジャメイカ盤が、もちろん日本人のは日本盤がオリジナルだと思っている。
後は、初回プレスか、再発かなどが問題になるが、レコードには本のように「初版」だとか、「第一刷」とか書いてないので、判定が難しい。
コレクターは主として盤にある丸いラベルで判断したりするが、初心者が最初からそういう事ばかりに頭が行っていたら、本末転倒になり、音が聞こえてこない。
 ただ、不幸にして、そのアーティストを後で知ったりした時、後追いで買おうとすると、この時間と意識のずれに、思わぬ大金をはたく始末になることが、多々ある。
いわゆる「プレミアがつく」ということだ。しかし、それなりの内容のやつは、必ずや再発される。特に今のCD時代では、ビニール時代に10年も15年も探していたアルバムが、ポロッとCDで再発されたりする。

リンダ・ルイスの『ラーク』がそのいい例だ。再発されたとたん熱が冷めるなんてものは、本当に求めていたものではないということだ。音楽やそれが発する雰囲気と時間が好きなのなら、上の3つの言葉など惑わされず、自分の好きなものを追求した方がいい。
強いインパクトを受けたり、繰り返し聞いたりして、愛着があるものこそが、自分にとっての「オリジナル」と言っていいと、それを忘れがちな自分に言い聞かせて、今回はこれで。

<Link>レコードハンティングのコツ (#1)

Link>レコードハンティングのコツ (#2)