Jukeと松本さんの思い出
Juke開店当時から発足したばかりのStiffレーベル周辺に心躍らせながら同級生Yくんと一緒に通い始めましたが、80年初頭あたりからリスナーとしての私にとってJukeと松本さんは単なるレコード屋さんを越えたの存在になっていました。
最初のきっかけは手動のタイプライターです。Jukeでプライスカードや壁にあった新譜入荷情報等で活躍していましたが、松本さんは限定されたフォントやピッチ調整に不満を話されていました。(それは冊子作製にこそ言えると思うけど、その後のワープロやDTPの登場で望みは叶うことになりますが)。

翌年就職していた私はその数年後、英文電子タイプライター(前述の不満をを解決できる!)の開発に携わり米IBM、伊オリベッティに対抗するという向う見ずなプロジェクトに参加することに。。
そして出来上がったプロトタイプのモニターを厚かましくも松本さんに押しつけ依頼したのです。でっかいブラックのマシンをカウンター上で目撃された方がいるかもしれません。
松本さんのフィードバック内容は詳細でまさにモニタの期待を上回る拘りでマシンの将来性展開にまで言及し、まさに日頃から「芸は細かく、ノリは大きく」を地でいってたという印象だったのです。
またある時Jukeスタート時の手書きの目論見書というかプレゼン資料を見せてもらう機会がありました。そこにはびっしりと音楽へ熱情とそれとは対照的な目標達成まで理路整然とした道筋が書かれておりそのシャープさに圧倒されたりもしました。
先の印象に加えて「ハートは熱く頭はクールに」を現場ファーストで実践されてきたんだと強く感じました。
あとおまけで誕生日がドンピシャ一緒であったことも勝手に親近感を抱いたのかも知れません。さらに82,3年ごろだったか日曜限定で店番をしていたこともありました。
ずっとそんなだった松本さんを誰かに例えるとしたらって考えると、、、読むべき100冊の本としてボウイがリストし99番目にあげた”The Sound Of The City / The Rise of Rock and Roll”の著者でDJでもあるCharlie Gillettではないでしょうか。
本の巻末のPlay ListはJukeが誇る未完の大作Grooviest Tunes 1200 / History of Rock & Roll 1920ー1979思い出させてくれるし納得もさせられると思います
また詳細は不明の伝聞ですが。。。ある日来福中だったQuestlove(The Roots)がJukeをフラっと訪れ気に入ったレコードをカウンタに山積みしたそう。カード購入しようとした巨漢Questlove(193cm)に対し松本さんは一歩も引かずここはキャッシュオンリーだと伝えて対応したそう(すごすごと換金に走ったらしい、当たり前なんだけど)。その情景が何となく想像できて好きです。
最後になりますが、今回のWeb製作が機運となりJuke松本さんの膨大な足跡が今後も続々とアーカイブ化されることを強く望みたいです。

元ジュークレコード・スタッフ 松尾真一